棘姫

知らなかった。

当たり前だけど、蒼の家族の事情なんて知る由もなかった。


ここまで背負っているモノがあっただなんて、想像してなかったよ…。




本当は体なんか売りたくないのに、本心を押し殺し自分を売っている女性。

援交をする理由なんて、
本当に様々だ。



…あたしは?

あたしはどうなるの?


蒼のお姉さんが体を売る理由を知ったのに、それでもまだ援交を続けるの?

こんなバカな事してても愛なんて手に入らない。


愛だけじゃない。
心はすり減り、様々なものを失っていくだけ。

得るものなんて、初めから何1つ用意されていないじゃない。


こんなこと、とっくに気付いてた筈なのに…




"もう、援交なんて止めなきゃいけない"

少しでも、そんな気持ちが芽生えた瞬間――

決まって浮かぶのは、疲れきったちぃちゃんの横顔。


あたしが幼い頃から、ちぃちゃんは毎日休まず働いていた。

両親の病気の事があるから、やっぱりお金が必要なんだ。


< 90 / 134 >

この作品をシェア

pagetop