恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜

これからバイトと言う香里奈と別れ、私は重い足取りで家へと向かった。

道端に散らばる桜の花びらを無惨にも踏み潰していきながら、考えるのは颯平のこと。


私って、ちっぽけな人間だったんだ。

たかがあれだけのことで、居留守を使って颯平に会わなかったり電話に出なかったり。

そんな私の突然の行動に、颯平は戸惑っているに違いない。

それでも意地になって理由さえ言わずに避けて。


何でだろう。

ムカムカするんだ。


鮮やかなピンク色の桜の花びらを、ローファーでグリグリッと踏み潰す。

アスファルトにめり込んでその色を失ってしまった花びら。

暫しの間、立ち止まって見下ろしていた。


春風が吹く。

宙に舞う花びらに取り残されて、今もその場に形を変えて止まっている花びらを眺めていると、



「あれっ、紗夜香?」

「……ハ、ル……くん?」



声のするほうへと振り返り、その場に固まった。

何でここにハル君が?

ハッとして足元を隠すように少し動かす。



「今帰り?」

「うん……」



急に自分のしたことを思い出して、心の中で桜の花びらに謝った。



< 118 / 359 >

この作品をシェア

pagetop