ツンデレ王子とアリス
第一章 「アリスと白兎」

「行ってきます」
 私、楠原有里朱(くすはらありす)はゆっくりと寮の階段を下りた。

階段を下りるたびに自身の柔らかい漆黒の三つ編みが揺れる。階段を降り切ると、有里朱は空を仰いだ。



 青色のペンキをぶちまけたように綺麗に広がる空を見ながら、静かに微笑んだ。



 時間にはまだゆとりがある。ゆっくりとした足取りで歩き出した。
 すると、「たったったった」という軽い足音が聞こえた。
「おはよう、アリス」
 声をかけられ、後ろを見ると目を見張るような美少女が立っていた。


 綿菓子のようなふわふわの茶色の髪に大きな瞳。小さな唇。一見するとフランス人形のような少女だが、一応有里朱の友達だ。


 名前は前原和音。有里朱の小学生の時からの友達で一番仲のいい友達でもある。
「おはよう、和音」


有里朱が微笑むと、和音もどこか幼さの残る顔で微笑んだ。有里朱が歩き出すと、和音も並んで歩き出した。
「そういえば、今日、転校生が来るんだって」


「本当?女の子?」


「男の人だって」
 正直、転校生が来るということは知らなかった。まぁ、実際私は情報というものにかなりのつく鈍感(?)なため、知らなかったのかもしれないが。

 有里朱達はゆっくりとした足取りで学園に向かった。

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