キミのとなり。
「お前ら、なんかあったのか?空気重いぞ。」
ヤベが後ろから顔をつっこんできた。
「あいつが何考えてんのか、よくわかんねぇ。」
「わかんねぇって?どういうこと?」
ヤベがさらに乗り出してくる。
「あいつ、先輩と別れたってこと…俺にだけは言えなかったんだと。」
ヒロシは眉間に皺を寄せて言った。
「何、お前、それでふてくされてんの?」
「ミキが俺に隠し事したの初めてなんだよ。」
ヤベが小さく“ほぅ”と言った。
「ミキちゃんのこと、なんでも把握してないと気がすまないのか?」
「そんなんじゃねぇけどっ・・」
ヒロシが吐き捨てるように言った。
「お前、彼女できねぇぞ。」
「そんな面倒くせーもんいらねぇよ。ミキで手ぇいっぱいだ。」
「ミキちゃん彼女にしちゃえよ。」
「今さら、…そんな仲じゃねぇし。」
「お前ら、変わってるよな。」
ヒロシはそういったことを考えたことがないわけじゃなかった。でも、今さら恋愛だの、なんだのの面倒な気持ちを抱えるより、今のこの状態をキープしていた方がお互いにとって楽だったし、その方が楽しかった。壊れやすい男女の関係よりも、ずっと付き合っていける友達でいる方がいいとずっと思っていた。
「でもよぉ、ミキちゃんの行動から見て、お前といる方が楽しかったから先輩と別れたんじゃないのか?」
確かに夏休みが明けてから特に、ヒロシのところへ来る回数が明らかに増えていた。ヒロシも気になってはいたが、ミキが何も言わないからてっきり彼氏とうまくいってるのだと思っていた。
“俺が原因か?”
「実際に今、雰囲気重いし、お互いになんか思うとこあんじゃねぇのか?」
さっきから、ヤベの言うことにヒロシは反論できないでいた。
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