キミのとなり。

幼なじみ以上恋人未満

「ヒロシくんて、鈍感だよね。」
ユウコがミキに向けて、ボソッと言った。
「え?」
ミキはわけがわからない様子である。
「ミキ、ヒロシくんのこと好きなんでしょ?」
「えっ?なんでそうなるのーっ!ヒロシは幼なじみっていうだけだもん。」
ミキは胸を張って言い切った。
「じゃあ、なんで先輩と別れたのよ。」
「それはっ・・」
ユウコがミキの言葉を遮る。
「ミキ、先輩と別れる時、ヒロシくんといる方が楽しいからって言ったじゃない。」
「だからって、ユウコの言ってる、そういうんじゃないもん。」
ミキは頬をぷうっと膨らませた。
「でもそしたら…ミキ、一生彼氏できないよ?」
ミキは下を向いて黙ってしまった。
「でも、ヒロシといるのが一番落ち着くんだもん。」
「ミキ、小さい頃からヒロシくんとずっと一緒にいてそれが自然になっちゃったんだね。一番落ち着くんなら、そのまま彼氏にしちゃったら?」
「やだ。」
ミキは小さな子供の様に膝を抱えて拗ねていた。
「だって、もし付き合ったら別れるかもしれないでしょ?今のままならずっと一緒にいられるもん。」
ユウコはやれやれといった感じでため息をついた。
「ミキ、ヒロシくんのこと好きなんじゃない。」


ミキはいつかのユウコとの会話を思い出していた。
“ユウコのせいだ。ユウコがあんなこというから…。”

「ミキ、最近お前なんかおかしいぞ。」
ヒロシが痺れを切らしたかのように言った。
あれから、ヒロシのミキへの態度もどことなく冷たい。
「そう?そんなことないよ?」
“あれ?あたし、ヒロシの前で何、作り笑いしてんだろ…。”
ヒロシは怪訝そうな顔をしている。ミキは、この場の雰囲気に耐えられなかった。
「あっ!用事思い出した!教室帰るね。」
“なんでヒロシに嘘ついてんだろ。なんか、ヒロシといても楽しくないや。”
ミキはこんな気分は初めてだった。
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