ワケあり!
「ああ…この子はいいな」

 見知らぬ男が、少女の目の前で足を止めた。

 書類をめくりながら、吟味しているようだ。

「お気に召しましたか?」

 気持ち悪いほどの営業スマイル。

 つっ立たされている彼女のことなど、既に物扱いだ。

「しかし…」

 言い淀んだのは、営業スマイルの方。

「この器量ですが…本当に?」

 他にも、よりどりみどりですよ。

 そんな言葉に、男は声を立てて笑った。

「面の皮一枚のことなど、どうでもいいのだよ」

 そして、彼は笑いながら手を伸ばした。


「さあ、行こうか」
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