ワケあり!
「ああ、天野女史は有名だな」

 帰りの車。

 世間話の中で、京が反応する。

 さすが、一年長くこの学校にいるので、噂くらいは耳にしたことがあるようだ。

「歩くスポットライトとか、フラッシュ女史とか、あだなだけは豊富だぞ」

 言いながら、京も笑っている。

「昨日の昼休みに、絹さんと一緒にいたおねーさん? 確かに派手だったよねー」

 了の記憶からも、すんなり引き出されたようだ。

 人の記憶に残る才能は、誇っていいだろう。

「でも、あの女の人たち、なんだったの? 絹さん、待ってなかった?」

 了の記憶は、余計なものを掘り出した。

「そうだな…なんで三年の天野女史が、おまえの話に出てくるんだろうな」

 京が、見逃すはずがない。

「絹さんに何かあるって、昼休みくらいしかないんじゃないか? 了との昼ご飯が、問題だとオレは思ってるんだけど」

 真面目な顔してババンバン。

 将は、正論っぽく了の昼の楽しみを奪おうとする。

「ええー」

 とばっちりを食ったのは、了だ。

 ゴージャス天野の話が、自分に及ぶとは思ってもみなかっただろう。

「私は、別に大丈夫よ…」

 校舎の違う了に会う、貴重な機会なのだ。

 ボスが、淋しがるではないか。

「分かった」

 何かを決意したような将の声。

 何が分かったのか。

「今度からオレも、一緒に行くよ」

 同じクラスだから、行き帰り一緒で安全だろ?

 なんと。

 ここで将は、昼食タイムに割り込むという荒技を繰り出したのだ。

「ええー」

 不満たらたらな了の声。

 彼にはかわいそうだが――今頃、ボスはVサインだろう。
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