ワケあり!

冷たい夏休み

 シャワーを浴びて、布団に横になった直後。

 目覚ましが鳴った。


 予想以上に、疲れていたようだ。

 あっという間に朝で、全然寝た気がしなかった。

 しかし、学校に行こうと思っていたので、だるい身体を引き起こす。

 その前に。

 携帯を、どうにかしなければ。

 渡部に蒲生と、ヤバい連中に知られてしまった。

 昨日、帰りついて電源を落としたままだ。

 支度を整え、どっちかがいることを祈って、居間に下りる。

 ボスが――いた。

 ほぅ、と絹はため息をついていた。

 安心したのだ。

 いつものように、きれいにヒゲも剃ったボスだったのだから。

「おはようございます」

 普通に、あいさつをする。

「あぁ、おはよう」

 言葉に、わだかまりがないではない。

 しかし、いつも通りに戻ろうとする気配は感じた。

 それで十分だ。

「ボス、すみません、携帯の番号とメアドを変えたいのですが」

 だから、絹は業務連絡に徹した。

 こういう事務事項のほうが、自然に処理しやすいのだ。

「分かった、すぐにやらせる。置いていきなさい」

 言われるがまま、絹は携帯をテーブルに乗せた。

「あと、学校への私の休みの理由はなんでしょう」

 口裏をあわせなければ。

「…風邪だ」

「分かりました、合わせます」

 朝食を抜いて行くか。

 寝不足もあるため、それで顔色の悪さを演出できる気がした。

 ピンポーン。

 チャイムが鳴る。

「おはよーございますー絹さんの具合どうですかー?」

 珍しく、三男坊が丁寧に呼び掛けている。

 くすっと、絹は笑ってしまった。

 嘘の理由とはいえ、心配してもらえるというのは、くすぐったいものだと。

「おはよう、了くん。迎えにきてくれてありがとう」

 絹は笑顔で応対した。

「行ってきます」

 ボスにも――
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