ワケあり!
 多分。

 了が、強くなりたいと思ったきっかけは、あの日にも関係しているのだろう。

 了が、それを口にしない事実の方が、実は重かった。

 少年は――決意してしまったのだ。

 男として。

「そういえば絹さん、ママのユーレイに会ったんでしょ?」

 あっけらかーんと、了はすごい質問を放り投げてきた。

 一体、どんな解釈をしたのか。

「僕も京都に行けばよかった。ユーレイのママにも会えたのに」

 無茶をいう末っ子だ。

 だが、それだけ会いたいと願っているのだろう。

「強い人、だったわよ」

 それは、間違いない。

 言葉に、了がにこっと笑った。

「うん、分かるよ。僕らを産んだママだもん」

 にこにこ。

 本当に、嬉しそうだ。

「パパがよく言ってた。『了のママは、とっても強かったんだぞ』って」

 彼の言葉が、映像を作る。

 まだ小さい了。

 母を恋しがって泣く了。

 抱き上げるチョウ。

 そして、母のことを話すのだ。

「僕のことは、何か言ってなかった?」

 そんな、人づてからしか母を知らない彼にしてみれば、ユーレイでも構わないのだろう。

「『みんな愛してる』って…」

 了個人に、宛てた言葉はない。

 喜ばすためだけに、捏造も出来ないので、絹は素直にそう言った。

「ちぇ、みんなかぁ」

 了は、少し不満そうだ。

 しかし、その目がキラーンと絹を見た。

「じゃあさ、じゃあさ、絹さん…絹さんは僕のこと、どう思ってる?」

 ひょいっと。

 了は話を軽く飛躍させた。

 あらあら。

 京がいないので、その線を簡単に踏み越えてきたようだ。

 相変わらず、ちゃっかりしている。

 絹は、にっこり微笑んだ。

「みんな、大好きよ」

 明らかな――盗用だった。
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