踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~

捜査会議

 その日の夜、美しが丘署の会議室では捜査会議が開かれていた。会議室の扉の近くには『女子中学生殺害事件』と書かれた垂れ幕が掛けられていた。その扉を潜る時、小島はこれが変わらなければいいと思った。
 会議室には県警の管理官、美しが丘署の署長、県警及び美しが丘署の刑事達が集まっていた。そこにいる者達の敬礼が済んだあと捜査会議が始まった。
 初動捜査の結果、死亡推定時刻は昨夜八時から十時の間、死因は紐状のもので絞められた窒息死、二本首にあるうちの一本の扼殺には生活反応がないこと、被害者は奇妙なメールを受信しており、このメールの発信者が特定できないこと、周辺住民には目撃者も悲鳴などの声を聞いた者が居ないこと犯行行現場付近には以前から変質者が出没していたという通報がなされていたことなどが報告された。小島もまた被害者の担任や被害者の友人から聞き出したことなどを報告した。
 これらの報告を元にして管理官は今回の事件を変質者の犯行及び被害者に特別な感情を抱いている者の犯行とし、交友関係から調べていくという捜査方針を立てた。
 だが、中学生に殺意を抱く者などいるのだろうか?という疑問を抱き、変質者の犯行であろうと、そこにいた殆どの刑事は思った。
ただ一人、小島良を除いて…。

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