踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~
「驚いたでしょう、娘の話…」
恵と美里はエレベーターホールに設けられた長椅子に座っていた。午前中の病棟は意外と人の動きが多い。食事の手配やベッドメイク、ゴミの回収など意外とやることが多いようだ。
そんな様子を見ながら、恵は美里の言葉に驚いていた。まるで先ほどの会話をどこかで聞いていたような口ぶりだったからだ。
「はい、正直言って信じられません」
恵は正直に感じたことを述べる。
美里はそれも見越していたのだろう、恵に対して微笑んで見せた。
この人には何も隠すことは出来ない。恵は背筋が寒くなっていくのを感じていた。
「でも、信じてもらうしかないの。私達はそういう世界と接しながら生きているから…」
美里は視線を反らして言った。その表情は横から見ても寂しそうに見えた。きっと誰にも信じてもらえないのだろう、恵はこの親子の孤独を感じていた。
「そうですね、それしかないですよね。でも上司にはどう報告すればいいのでしょう。こんな話し、誰にも信じてもらえないでしょうから」
「そうね、そのまま報告は出来ないでしょうね、でもそれがあなたの仕事でしょう?」
美里は寂しそうに言った。
あの子は偶然、そこを通りかかった。
そう報告するしかないと恵は思った。
同じ頃、小島は美しが丘中学校の職員室で野本を待っていた。授業を行っている時間なのだろう、職員室の中には殆ど人がいなかった。だからじっと待っている小島にはお茶さえ振る舞われていなかった。
予定ではあと二十分ほど待てば授業は終わるだろう。休憩時間は五分だと聞いている。出来れば副担任の吉田恵子にも話を訊きたい。たぶんこの二人には受け持っている次の授業は自習にしてもらうしかない。
待っている時間は長い、こういうときに何か気を紛らわせる持っていればよいのに。小島はいつも思っていた。
恵と美里はエレベーターホールに設けられた長椅子に座っていた。午前中の病棟は意外と人の動きが多い。食事の手配やベッドメイク、ゴミの回収など意外とやることが多いようだ。
そんな様子を見ながら、恵は美里の言葉に驚いていた。まるで先ほどの会話をどこかで聞いていたような口ぶりだったからだ。
「はい、正直言って信じられません」
恵は正直に感じたことを述べる。
美里はそれも見越していたのだろう、恵に対して微笑んで見せた。
この人には何も隠すことは出来ない。恵は背筋が寒くなっていくのを感じていた。
「でも、信じてもらうしかないの。私達はそういう世界と接しながら生きているから…」
美里は視線を反らして言った。その表情は横から見ても寂しそうに見えた。きっと誰にも信じてもらえないのだろう、恵はこの親子の孤独を感じていた。
「そうですね、それしかないですよね。でも上司にはどう報告すればいいのでしょう。こんな話し、誰にも信じてもらえないでしょうから」
「そうね、そのまま報告は出来ないでしょうね、でもそれがあなたの仕事でしょう?」
美里は寂しそうに言った。
あの子は偶然、そこを通りかかった。
そう報告するしかないと恵は思った。
同じ頃、小島は美しが丘中学校の職員室で野本を待っていた。授業を行っている時間なのだろう、職員室の中には殆ど人がいなかった。だからじっと待っている小島にはお茶さえ振る舞われていなかった。
予定ではあと二十分ほど待てば授業は終わるだろう。休憩時間は五分だと聞いている。出来れば副担任の吉田恵子にも話を訊きたい。たぶんこの二人には受け持っている次の授業は自習にしてもらうしかない。
待っている時間は長い、こういうときに何か気を紛らわせる持っていればよいのに。小島はいつも思っていた。