アクセサリー
「隆一はまた彼女いましたよ。ねえ?」
 玄太郎はこっちを見ながらニヤニヤ笑う。
「またいんの? いっそみんな呼んじゃえよ」
 トモヒロさんが笑いながら言った。
「彩乃のこと? あれは別に何でも……」
「その前にOLやってる彼女いたじゃん」
 隆一には二つ上でOLのタカミという彼女がいた。ただ最近はほとんど会っていない。
「どっちかにしろよ」
「だから違うって」
 彩乃はバンドに興味があるだろうか? ないような気もする。あんまり期待しないでおこう、別に好きでないし。でももう一度会ってみたい。彩乃がもう少し明るくて、化粧気があって、遊びも覚えてきたなら、魅力的な女になるだろうな、と思った。

「そろそろ出ないと帰れないんで」
 午後十時半を回ると、千葉県に住む玄太郎はそう言って立ち上がる。
「そっか。お疲れ」
「お金いくらすか?」
 カレーライスの代金を置いて、のっそりと帰っていく。
 
 ココスの店内には同じくバンド帰りと思われる四人組、大学生、パソコンをいじるサラリーマン。
そろそろ俺たちもでようか? そんな感じでトモヒロさんは時計に目をやる。そうですね。そううなずきながら隆一と徳さんも帰り支度をする。
 吉祥寺駅で別れ、隆一は中央線に乗った。車内は混んでいる。ギターケースを抱えながらいるのはきつい。

 隆一たちは大学の小さな軽音サークルでバンド活動をしている。大学で何かイベントがあれば演奏している程度で、積極的にライブを開くということはない。だいたいバンド名も特に決めていないのだ。
 まあ、いい。終わったら考えよう。とりあえずは彩乃に来てくれるか聞いてみよう。そう考えながら携帯を取り出した。

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