アクセサリー
 カーテンがいっぱいに光を含んでいる。そっと、カーテンをめくると暖かい朝日が彩乃に降り注ぐ。一気に窓も開けてしまう。ピリっとするような冷たくて新しい空気が部屋に入ってくる。はっきりといえば寒いのだが、彩乃は天気のよい朝に窓を開放し、空気の入れ替えを肌で感じることが好きだった。冷たいけれど、「今日もがんばれよ」というように気合をいれてくる冷たい風が好きだ。それに今日は朝から気分が良い。
 目覚めると、机の上の携帯にメール着信を知らせるランプが点滅しているのだ。もしかしたら! という期待に胸がふくらむ。ドキドキしながらメールボックスを開くと、隆一の名前がある。初めてのメールだ。なんだか特別に意識してしまい、胸がいっそう高鳴る。
 ドッ、ドッ、ドッ……、と心臓の音が激しく鼓膜を刺激している。こんなに心臓の鼓動を意識することも久しぶりだ。体全体が高揚して、一気に目が覚める。ゆっくりと隆一のメールを開く。

 件名「今日はどうも。」      0:31 10 /25  

 こんばんは。バイトはケーキ屋だっけ? おつかれさま。
話は変るんだけど、俺らのバンドのライブが十一月一日にあるんだ。彩乃にぜひ見に来てほしくてさ。都合がつくなら連絡ちょうだい。詳しいこと教えるよ。それじゃ、おやすみ。
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