アクセサリー
「いやいやそれは……」
消極的に否定をするが、その顔を見ればまんざらでもない様子だ。もしかしたら本番は本当にそう言うかもしれない。
トモヒロさんがからかって笑っている。
時刻は午後八時五十分。あと練習時間はあと十分。正確には、五分前には終了を告げるランプが点滅する。これはこの五分間に片づけをはじめてほしいという合図だ。次の予約の人にスムーズにバトンタッチしてもらいたい意図がある。だから時間はもうほとんどない。
「どうする? なんか気になる曲があったら、それを最後の一曲にしよう」
トモヒロさんの提案に玄太郎は、
「それなら、『誘惑』にしましょうよ」
と言い、
「お前、それ自分がやりたいだけだろ」
と徳さんがつっこむ。トモヒロさんはマジメな顔で、
「それならバラードが一番失敗目立つから『瞳の住人』にしよう」
「いいよ、それで」
隆一はさっそくギターを構えた。エフェクターを踏んで、音を『瞳の住人』に合わせる。
「オッケー」
徳さんもマイクを握りなおし、玄太郎も構える。
「いつでもいいぜぃ」
「いきますよー」
玄太郎がシンバルでカウントを叩く。ピックが汗ですべり落ちそうになったので、あわてて持ち直す。なんとかカウントには間に合った。この曲は始まりが大事なので、ここはいくら注意をしてもしすぎることはない。隆一は慎重に弦の一本一本を弾いた。
徳さんは目を閉じながら、うんうんと頷いてリズムをとる。徳さんは口を開いて歌いだす。隆一もボーカルに合わせて小さく口ずさむ。隆一はこの曲が好きだった。
徳さんはとりたて歌が上手いわけではないのだが、高音がよくでる。それに少しでも上手くなろうと、腹筋を日課にするなどして、かなり努力している。だから誰も文句は言わなかった。
消極的に否定をするが、その顔を見ればまんざらでもない様子だ。もしかしたら本番は本当にそう言うかもしれない。
トモヒロさんがからかって笑っている。
時刻は午後八時五十分。あと練習時間はあと十分。正確には、五分前には終了を告げるランプが点滅する。これはこの五分間に片づけをはじめてほしいという合図だ。次の予約の人にスムーズにバトンタッチしてもらいたい意図がある。だから時間はもうほとんどない。
「どうする? なんか気になる曲があったら、それを最後の一曲にしよう」
トモヒロさんの提案に玄太郎は、
「それなら、『誘惑』にしましょうよ」
と言い、
「お前、それ自分がやりたいだけだろ」
と徳さんがつっこむ。トモヒロさんはマジメな顔で、
「それならバラードが一番失敗目立つから『瞳の住人』にしよう」
「いいよ、それで」
隆一はさっそくギターを構えた。エフェクターを踏んで、音を『瞳の住人』に合わせる。
「オッケー」
徳さんもマイクを握りなおし、玄太郎も構える。
「いつでもいいぜぃ」
「いきますよー」
玄太郎がシンバルでカウントを叩く。ピックが汗ですべり落ちそうになったので、あわてて持ち直す。なんとかカウントには間に合った。この曲は始まりが大事なので、ここはいくら注意をしてもしすぎることはない。隆一は慎重に弦の一本一本を弾いた。
徳さんは目を閉じながら、うんうんと頷いてリズムをとる。徳さんは口を開いて歌いだす。隆一もボーカルに合わせて小さく口ずさむ。隆一はこの曲が好きだった。
徳さんはとりたて歌が上手いわけではないのだが、高音がよくでる。それに少しでも上手くなろうと、腹筋を日課にするなどして、かなり努力している。だから誰も文句は言わなかった。