身代わり王女に花嫁教育、始めます!
「軽はずみなことを口にするな。一滴の血も流すつもりはない。信じるも信じないもお前しだいだ。さあ、どうする?」


彼女はサクルの胸に手を置くと、小さな声で答えた。


「サクルさまの仰せのままに」

「よかろう。私もこの国の神に誓おう。お前を私の花嫁にしてやる、と。――但し、そのときは生涯この私に尽くすと誓え」


リーンの瞳から涙が零れ、いくつもの雫が頬を伝う。

しかしその顔は、幸福に満ち溢れていた。


「はい。はい誓います。サクルさまの妻にしていただけるなら……この心と身体を捧げます。でも……いえ、余計なことは考えなくてよいのですね。わたし、砂漠の宮殿に行きます」


これでリーンを我が物にできる。

砂漠の宮殿で王として顔を合わせても、拗ねるようなことはないだろう。リーンの純粋な愛情を手に入れ、サクルは浮かれていた。


砂塵に紛れて漂う、危険な気配にすら気づけないほどに――。


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