身代わり王女に花嫁教育、始めます!
体を揺さぶられ、リーンはハッとして目を覚ます。


そこは当たり前だが、砂嵐の中ではない。薄暗い洞窟のような場所だ。乾燥して、息をするだけで口の中に砂が入り込むような気がした。


「王女様、どこか痛むところは? 私のことがおわかりか?」

「あ……アリーどの? わたしたちは生きてるの? アリーどのっ! あの獣はなんなの? どうして砂嵐にあんな」

「少し落ちつきなさい。我々は助かった訳ではないのだから」


アリーの服はボロ布のようになっていて、あちこちに傷を負っていた。

あの砂嵐に巻き込まれたのだ。当然といえば当然だろう。命があるだけでも不思議なほどである。


そしてリーンの体もすり傷だらけだった。

バスィール公国で最も美しいと称された王女の花嫁衣裳も、引き裂かれてボロボロになっている。

だが、あの獣はふたりを噛み砕かなかったようだ。ふたりの体に大きな傷はなかった。


「ここはどこでしょう? アリーどのは何かご存じなのですか?」

「残念ながら、私も意識を取り戻したばかりなのです。場所も時間もわかりません。しかし、あの“五つ岩のオアシス”からさほど遠い場所ではない。あまり距離があっては、魔物は動けぬといいますから……」


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