身代わり王女に花嫁教育、始めます!
『王の花嫁を奪ったとなれば、我らは砂漠の英雄となれる。王も万能ではないという証だ!』


カッハールの声が聞こえ、背後から回された手に両方の胸を鷲づかみにされた。

その乱暴な触れ方にリーンの体は硬直する。

ふと気づけば、リーンは全裸だった。カッハールの手がリーンの肌をなぞり、それは下腹部に向かう。柔らかい肌を硬い岩で擦られるような痛みが襲い……リーンは堪え切れず涙を零した。


(痛い……痛い……助けて……サクルさま)


そのとき――リーンの耳にさらさらと水の流れる音が聞こえた。

糸のように細い水の流れが見える。その向こうに見えるのは金色の髪をした男性。


(サクル……さま)


助けを求めて懸命に差し出した手を彼が掴んだ。


『あなたを助けにきた……シーリーン王女』


覗きこんだその目は煌く黄金の色ではなく、真っ赤に染まり血が溢れていて…………。


< 191 / 246 >

この作品をシェア

pagetop