身代わり王女に花嫁教育、始めます!
四年前、わずか一度きりではあるが、彼は王女と対面した。

いや、垣間見た、というほうが正解かもしれない。


大公自慢の美少女ではあったが……周囲に可愛がられ、我がまま放題に育ったのがひと目でわかった。

王女の気品は感じられず、冷たく光る青い瞳は無垢というより無慈悲な本性を映し出していた。


――この娘はやがて砂漠のサソリ(アクラブ)に匹敵する女になるだろう。


彼はレイラー王女を妻とするのに嫌悪を感じた。

王女より、その隣で決して逆らうことなく、笑みを湛える少女に興味が惹かれたくらいだ。もう少し年長であったならクアルンに連れ帰り、ハーレムに加えただろう。


今回も、輿入れ前に断らなかったのは、あのときの少女を侍女として同行するかもしれない、と思ったからだ。

だが――チラリと見えた瞳は薄く陰り、間違っても凍りつくような青ではない。


小国の大公ふぜいにこんな侮辱を受けるとは思わなかった。


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