身代わり王女に花嫁教育、始めます!
涸れ谷を出てすぐ、規則正しい揺れとサクルの腕の中にいるという安心感で、リーンの意識は途切れてしまった。

それからずっとである。

いったい何時間サクルにもたれかかったままでいたのだろう。


慌てて身を起こそうとしたリーンをサクルは強い力で引き止めた。


「誰が離れてよいと言った。宮殿に入るまで、お前は私に抱きついているのだ」

「でも、ずっと支えていただいて……重かったのでは?」

「確かに、落とさぬよう馬を走らせるのは、中々骨が折れたな」

「すみません。なんとお詫びしたらよいのか」


リーンが恐縮して身を竦めると、サクルは艶めいた笑みを浮かべた。


「詫びか……では、口づけで許してやろう」

「そ、そんなっ」


周囲には王を守るための護衛兵がたくさんいる。もちろん、側近カリム・アリーも。リーンの見える範囲にはいないが、どこかにいるはずである。


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