身代わり王女に花嫁教育、始めます!
突然触られ、リーンは膝を手前に引き寄せた。

だが、背後から触れられる分には、全く防ぐことにはならず。


「精霊を呼ぶ呪文だが、人の耳に直接流し込めば、官能を呼び覚ます。たいがいの女に効き目があるが……。あなたほどよく効いた方はいない。しかも、純潔でありながら、なんという淫乱な躯をしているのか」

「そ、それでは、儀式は終わったのですね。わたしの純潔は証明されたのですよね?」


リーンがどうにか身体を起こしながら尋ねると、カリムは首を縦に振った。


「では……もう結構です。あとは自分でやりますから、出て行ってください!」

「自分で? それはおかしなことだ。レイラー王女は着替えも入浴も侍女の手助けが必要だ、と聞いたのだが。だからこそ、侍女を同行させたい、と。だが、ひとりでおできになるなら、侍女はシャーヒーンひとりでよろしいな」


リーンはしまったと思ったがもう遅い。ホマーを国に帰したあと、別の侍女を呼び寄せるという手段は使えなくなった。

王との対面前なら、大公がレイラー王女を見つけ出し、ここまで送り込んでくれたら入れ替われると思っていたのに。


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