身代わり王女に花嫁教育、始めます!
様々なことを考えながら、リーンはカリムの入ってきた出入り口に何度も目をやる。

何重にもなった不透明なカーテンがおもりでも付けられたように、ピクリとも動かない。


昨夜のことは、まるで夢の中の出来事のようだ。リーンは思い出すだけで、下腹部に甘い疼きを覚える。


“精霊を呼ぶ呪文”彼はそう言った。


そんな言葉を使えるのは神殿にいる選ばれた人たちだけだと思っていた。


バスィールにも“砂漠の精霊に祈りを捧げる神殿”がある。そこには精霊と対話できる選ばれた人たちがいて、彼らが外に出てくることはなかった。

もちろん、一般人は神殿に入ることもできない。


いつだったか、レイラー王女は、


『巫女から生まれた男子は神官(マー)になるのよ。神官は十一の階級に分かれていて、でも襲われるから人前では普通にしているのですって』


兄上に聞いたのか得意げに話していた。


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