ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
「ねえ、なんで私があいつに脅迫文出したと思ってんの? あんたが出そうとしてたのを、引き継いでやったんじゃない」

驚いて目を丸くする私を、さもおかしそうに日吉は嘲笑した。

「あたし、あいつと帰り道同じなのね。もっと言えば、家が近所なのよね。あの日、あたしは部活で遅くなって家路についたのが暗くなってからだった。あいつの家の前に、あんたいたよね?なにか、紙を持って――」

日吉の言葉を聞きながら、私の中で不安が広がる。

「あんたは何かを悩んだ後、その紙を丸めて近くのゴミ捨て場に捨てた。あたしはそれを拾って見てみた。そこにはこう書かれてあったわ――いつでも見てる――って」

頬から冷たい汗が伝った。

「始めたのはあんたじゃない」

「違うわ! やろうとは思った、でも私は結局一通だって出してないのよ!?」

「そうね、そうかも知れないわね」

――本当よ!
叫ぼうとした時、日吉はにやりと口の端をゆがめた。

「どうしてそんなもの出そうとしたの? ねえ、私が言った事覚えてる?〝案外、正解だったんじゃないの〟」

――なにを言う気!?
ドクドクと鼓動が早くなるのを感じた。

「――あんたに、霊感なんてないのよ。だから、そんなもの出して、自分の価値を高めようとしたんだわ。ねえ、感謝してよ。私のおかげであんたのその嘘っぱち、みんな信じてくれたのよ?」

「わ、私はそんな事望んでない!」

声を荒げた私を、日吉は軽蔑したように見て、また鼻で笑う。

「でも良かったわ」

「え?」

突然の言葉に、私は戸惑った。

「あなたが高村を殺してくれて。正直助かったのよねぇ~」

「……っ」

(あんたのせいでしょ!?)
悔しくて日吉を睨むと日吉は、そんなに睨まないでよと言って気だるそうに続けた。

「私もねぇ、アンタが優梨に問い詰められる前から、あいつをいじめただろうって責められてたの。それであの日、話があるから一緒に帰りましょうって優梨に言われて、ついに脅迫文に感づかれたかなって思って、榎木に聞きにいったのよ。あんたが優梨に呼び出されてたら、優梨の事だから、カマかけに呼ぶんだって事は解ったからね、あたし含めて」

言って遠くを見つめる。

「だから、全部教えたのよ。あんたがあいつの家の前にいたのを見たことがある、捨てた紙には脅迫文が書かれてた。だから、きっと榎木は霊感なんてないんじゃないか――って。もちろん、あたしが出した事は黙ってたわよ? でも、全部事実でしょう?」

だから良いでしょう、と言うように日吉は私を見た。

「でも、まさかあんたが本当にあんな一言で人を殺すとは思ってなかったけど――せいぜいあいつの時みたいに嘘並べるとか、脅すとかして学校にこれなくしてくれるだけで良かったんだけどね」

言って、日吉はぽつりと呟いた。

「優梨も優梨だわ……自分だけがつらいみたいな顔して――」

私が怪訝な顔を浮かべると、日吉ははっとなって咳払いをした。

「まあ、そんな事はどうだって良いのよ。早くお金、出しなさいよ」
手を伸ばす日吉の手のひらを私は見つめた。
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