先輩へ… 16年後のラブレター
「じゃあ、そろそろ行くね…。

急に来ちゃってごめんなさい。

ありがとう。」


私が手を差し出した。

最後に、水野先輩に触れたかった。

本当は、水野先輩の胸に飛び込みたかったけど…。

もう二度と触れることのできない、水野先輩。

「これぐらいは、いいよな。」

そう言って、水野先輩は私の手を両手で包んでくれた。


暖かい手……。


「でもさ、運命って言うか、そういうの、あるかもな。

俺たちは別れちゃったけど、16年経ってもこうして会えた。

実はここ何年か、花火は家じゃなくて対岸の公園で見てたんだ。

今年はたまたま家にいたんだ。

公園で見てたら、会えなかった…。

今日は会えるって、そういう運命だったんだよ。」


ずっと泣きっぱなしの私だったけど、また大粒の涙が次から次へとこぼれる。


「うぅ…。やだよぅ。

帰りたくないよぅ…。

離したくないよぅ…。

でも、ありがとう。

どこかで見かけたら、声かけてね。

元気でね…。」

「うん。

がんばれよ…。」





手が離れた……。
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