誘惑のクラン(血族)
あまりの酷いありさまに、璃子は叫んでいた。


「――ちゃん! ――子ちゃん!? 璃子ちゃん!」


誰かに身体を揺さぶられ、恐怖におののく場所から離れ、璃子は目を開けた。


「璃子ちゃん、大丈夫かい? 悪い夢を見たんだね。酷くうなされていたよ」


「……」


起きたのに、まだ脳裏に父の酷い顔が焼き付いている。


「璃子ちゃん?」


「ちょっと怖い夢をみただけです。大丈夫です……」


恐ろしい顔だった。


起き上がった璃子は両手を自分の身体に回し、ブルッと震える。


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