キミがいれば

「光輝…元気?」
「…元気だよ。太陽みたいに笑ってる」
「そっか」

先生の見せた涙をこらえた表情は、誰よりもきれいで。
俺は目を奪われた。

「先生…」
「ん?」
「高校の時、光輝君どんなんだった?」
「んー…。太陽みたいに笑ってた」

太陽…。

そう、俺達の太陽は…
光輝君だった。



「他には?」

知りたいんだ。
光輝君の事。

俺くらいの年齢の光輝君のこと。

誰だって憧れの人のこと、知りたいだろ?

「バスケが上手くて、いつも、私のことバカにするの。チビって」

優しく微笑む先生の横顔は、今思えば光輝君に似ていたね。
2人とも、いつも優しく微笑んでくれた。


「高校の時から小っちゃかったんだ?」
「うるっさいわね!…光輝はね、いつもへらへら笑ってて…。でもバスケの事になると、すごい真剣になるの」

うん…。
分かるよ。

「モテるのに、女には興味ないし、勉強しないし」

俺と同じだ。

「バスケばっかで。いつも、大きな背中でボールを追ってた」

今と変わんないね。

「…大好きだったの」

わかんない。

人を好きになる感情とか、好きになる瞬間とか。

どこを好きになって
なにを愛すのか。

幼い俺には分からなかった。


それでも、先生を離したくなかった。
守りたかった。

例え、俺を愛してくれなくても。
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