好きだと言えなくて

「あれ?!確かここに置いてたはずなんだけど・・・」

どうしよう・・・置き傘、なくなってる・・・

教室の前で途方に暮れていたあたしに、後ろから声がした。

「これ、使えば?」

そう言って差し出された傘は、俊ちゃんの傘だった。

「俊ちゃん・・・」

振り向くと、そこにいたのは優しい顔の俊ちゃん。

「じゃ、じゃあ、一緒に帰ろう?」

勇気を出して俊ちゃんにそう言ったあたし。
なのに・・・俊ちゃんは・・・

「あ、大丈夫だから・・・友達に入れてもらって帰るし・・・」

そう言ってあたしに傘を渡した俊ちゃんは、走って行ってしまった。

だよね・・・あたしなんかと一緒に帰ったら、彼女が嫌な想いするもんね・・・
もう、俊ちゃんはあたしの彼氏じゃないんだもんね・・・

あたしは涙を流しながら、俊ちゃんの傘を差して帰ったんだ。

前は一緒に帰ってくれたのにな・・・



< 33 / 105 >

この作品をシェア

pagetop