好きだと言えなくて
「あれ?!確かここに置いてたはずなんだけど・・・」
どうしよう・・・置き傘、なくなってる・・・
教室の前で途方に暮れていたあたしに、後ろから声がした。
「これ、使えば?」
そう言って差し出された傘は、俊ちゃんの傘だった。
「俊ちゃん・・・」
振り向くと、そこにいたのは優しい顔の俊ちゃん。
「じゃ、じゃあ、一緒に帰ろう?」
勇気を出して俊ちゃんにそう言ったあたし。
なのに・・・俊ちゃんは・・・
「あ、大丈夫だから・・・友達に入れてもらって帰るし・・・」
そう言ってあたしに傘を渡した俊ちゃんは、走って行ってしまった。
だよね・・・あたしなんかと一緒に帰ったら、彼女が嫌な想いするもんね・・・
もう、俊ちゃんはあたしの彼氏じゃないんだもんね・・・
あたしは涙を流しながら、俊ちゃんの傘を差して帰ったんだ。
前は一緒に帰ってくれたのにな・・・