檸檬の変革
僕は動かずじっとしていた。
老人は胸の傷に手を置き一言言った。


『シンジ』


僕は動けずにいた。
老人は涙を流し『シンジ』と繰り返した。


暫くして老人はゆっくり胸から手を離し、小さな小箱を出して僕の前に置いた。

老人は指差し、開けるように促した。

僕はゆっくり箱を開けた。
中には鮮血みたいに真っ赤な色の矢尻みたいな形をしたモノに革紐が巻き付かれたネックレスみたいなモノが入っていた。


老人はゆっくり何かを呟き天を仰ぎ両手を上に上げた。
それから僕にそれを着けろという仕草をした。

僕はネックレスを取り出し首に着け紐を硬く結んだ。
ペンダントベッドが丁度胸の真ん中に当たった。


老人は初めて優しく微笑んだ。


僕は自分が涙を流していた事をこの時迄気付かなかった。
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