檸檬の変革
マスターはニコリと目尻にシワを下げて笑った様だった。口は髭で見えなかったから。

マスターはアルトの少しかすれた声で私に語りかけた。

『お嬢さん。雨が嫌いかい?』

私はサラリと答えた。

『はい。嫌いです。濡れるし、何か惨めな気持ちになるし、憂鬱になるから。』


マスターはまた人の良さそうな笑顔を浮かべて
口を開いた。


『お嬢さん。長雨にピッタリの昔話を聞かせるよ。』


私はマスターを見てコクリと首を縦に振った。
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