LOST ANGEL
「わたしが幽霊だって、証拠があればいいんだよね」
今にも泣きそうな顔をしながら、彼女は喋り続けた。
「手、出して」
「手?」
「わたしの胸、押してみて」
「えっ!?」
そりゃ、まずいだろ〜!
急に体温が上昇する。
「大丈夫」
オレは大丈夫じゃないぞ!
真っ赤になっているだろう顔を、彼女に見られるのが恥ずかしくて下を向いてしまう。
しかし小柄な彼女は、そんなオレの顔を覗き込んで呆れ顔をする。
「エロいこと考えてないで、早くして」
見抜かれていたことに対し、更に熱が上昇してしまった。
オレは小さく深呼吸する。
彼女は黙って、顔の前に掲げたオレの手を見ていた。
「いい?」
「いいよ」
それはとても奇妙なやり取りだった。
右手をゆっくり、彼女の胸の真ん中に押しあてる。
さすがに膨らみには手が出せなかった。
……?
ヒヤっとした冷気のようなものを感じる。
火照っていた身体が凍り付くようだった。
……っ!!
「やっぱり貫通するんだね」
彼女は平然と言う。
オレは驚きのあまり言葉を失っ
た。
「ね。わたし幽霊でしょ」
オレの腕を身体に貫通させながら彼女は勝ち誇ったような顔をし
た。