LOST ANGEL

「まあ、お年寄りに機械操作は難しいだろうね」

「でしょ。だからわたしみたいな若い層は、それほど苦労しないで記入出来たんだけど、その後がまた面倒だったのよね〜」

眉間にしわを寄せて記憶をたどっていく杏奈を見ていると、自分もいつの間にか同じ顔をしていることに気が付いた。

「そのデータが神様に届くまでには時間があって、その待ち時間に自分の人生についての感想文を書かせられたり、来世でどう生きたいかを書かせられたり…」

「それもパソコンみたいな機械で記入するの?」

「そうよ。だからお年寄りは神様との面接まで数ヶ月かかったりする人もいるみたい」

「じゃあ、割と君は早い方だったんだ」

「まあね」

杏奈はちょっと誇らしげな顔をした。

そして、話を聞いて気になる点がいくつかあった。

「神様って1人なの?」

「そうだよ。だから余計に混雑してんの」

「宗教とかで別れてたりしないのか」

最も気になる所である。

「宗教なんて、この世だけにあるものよ」

なんだか少し寂しい気持ちになった。

想像していた美しい世界が崩れていく。

空の上にある、目には見えない汚れのなき世界。

咲き誇る花々、清らかな川、蓮の葉が浮かぶ輝いた湖。

そんな美しい場所で亡き祖父が安らかに眠っている。

そう思っていたかった。

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