LOST ANGEL
「…杏奈の生きてきた場所に片っ端から行ってみる」
「それって、今失敗したことと同じじゃん」
呆れたようにため息をつく杏奈。
「場所が変わればなんとかって言うだろ。とにかく行動しなきゃ何も変わらない」
「次はどこに行くの?」
杏奈は仕方なさそうに尋ねてき
た。
「…高校かな」
「高校ね…」
高校へ向かうためにオレたちは駅に引き返した。
喉がかわいたため、コンビニで水を買う。
杏奈は店の外でじっと何かを見ていた。
「どうした?」
「あっ…これ」
杏奈が見ていたのは花火大会のポスターだった。
「毎年近所の川でやってるの。わたしは1度も行ったことなかったんだけど」
「行きたかったの?」
「……」
杏奈はわかりやすい表情をする。
「来週か…」
「だね…」
「もし、まだ成仏できてなかったら行ってみるか」
「ホントに?」
「成仏する気あるのかよ」
「あっ…あるよ!」
杏奈の顔に笑顔が戻ってホッとする。
早く成仏させてあげなければならないと思っていたが、この花火大会は連れてきてやりたい。
そんな風に思った。
それでも、杏奈の高校を目指し、再び電車に乗り込んだ。