LOST ANGEL

「オレは忘れないよ」

「……」

それは励ましじゃなくて本当の意味で。

こんな不思議な出会い、忘れる訳がない。

「う〜……。慧斗のバカ!そんなこと言われたら泣いちゃうじゃんか!」

「泣けばいいだろ」

「やだ〜!泣き顔なんて見られたくないもん!」

「オレは見たい。泣け」

「なによ!急に偉そうになって、意地悪だ!」

「オレは優しいんだろ?」

「なし!なし!前言撤回!」

それだけじゃない。

オレはこの強がりな幽霊少女に既に引かれていたんだ。

自分でも気付かないうちに。






キッチンに食材を並べる。

じゃがいも、人参、玉ねぎ、豚
肉。

「カレー?肉じゃが?」

オレの周りをチョロチョロする杏奈。

「カレー」

「カレー粉は?」

あ…、忘れた。


「いってらっしゃい」と見送られてコンビニまでカレー粉を買いに出た。

「いらっしゃいませ〜」

顔馴染みのバイトくんに笑顔で迎えられる。

カレー粉を探しながら、オレはサッカー少女の言葉を思い返していた。

取材、マスコミ…。

何でこんな言葉が使われるんだ?

杏奈は車に引かれた事故死だと言っていた。

ただの事故じゃなかったのか?

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