私の好きな人は駐在さん
「いらっしゃいませ。」
好印象なボーイが、すっと、席まで案内してくれ、さっとメニューボードを持ってきて渡してくれた。
「お飲み物は何に致しましょう?」
「じゃあ、私はこの、白ワインで。」
そういって、メニューにかかれた白ワインを由紀が指差した。
私は、お酒には詳しくないので、咄嗟に、
「わたしも同じもので!」
と答えた。
「かしこまりました。」
そういって、ボーイは軽く微笑んで、軽やかな足取りで中へ引っ込んでいった。
丸いテーブルが室内に六個程度。
ワインレッドの絨毯に、深緑のテーブルクロス。
温かい色の照明に、落ち着いたクラシックのBGMがぴったりマッチしていた。
パラパラとちょうどいいくらいの人数の人が、そんな空間で穏やかに談笑をしながら料理を楽しんでいた。
「すっごくいいお店だね。」
私は、何故か声をひそめて由紀にいった。
「でしょ??素敵でしょ?」
少し自慢げな顔をして、由紀が答えた。
「ここの、パスタ。とっても美味しいの。オススメ。」
そういって、由紀はメニューボードに視線を落とした。
「どれにしようかな……」
優柔不断な私は、早速様々なメニューに目移りして、即決できそうになかった。
「…で、何か、あったの?」
私は、メニューボード片手に、由紀に尋ねた。
「えっ…??」
由紀が意表を突かれたように目を大きく見開いて私を見た。
「こうして、久しぶりに私と食事だなんて、何か話したいことでもあったんじゃないの?」
私は、得意げな顔をした。
由紀は穏やかな微笑を浮かべ、
「あとで、ゆっくりね。まずはメニュー決めで思い切り悩もう。」
二人で顔を見合わせてニッコリ笑い、メニューにふたたび目を向けた。