いつか、眠りにつく日
「でもね、後悔はしてないんだ」
恭子は私を見て笑った。
「案内人がやさしい人でね。ぐちゃぐちゃな身体を元に戻してくれただけじゃなく、地縛霊になった私の邪気をたまに吸い取りに今でも来てくれるの。だから、悪い霊にならずにここで座って過ごしているの」

「さっきは襲おうとしたくせに」
彼女のようにやさしく微笑もうとしたけれど、うまく笑えなかった。

「そろそろ吸い取ってもらう時期なんだけどな。へへ、ごめんね」

「・・・その後、彼とは?」

「力がなくってね、その後の人生は見に行ってないの。でも、知りたくないのも正直なとこ。彼はきっと新しい人生を過ごしている。そこに私はいないから、だから知りたくないの」
恭子がさみしげに言うと、その息は白く宙に消えた。

 それは、まるで恭子の心の動揺を表しているように、はかなく弱く見えた。

 強かったり弱かったり・・・それが人間なのだと思った。












 




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