いつか、眠りにつく日
 ふいに視界がかげったような気がした。
 
 白い煙があたりに立ち込めている。

「ああ、来た来た」
恭子が両手を合わせて、にっこりと笑った。

「案内人?」

 確か、案内人が出現したり消えたりしたときにこの煙は出現していたはず。

「そう、邪気を吸い取りに来てくれたの」

 煙は屋上を白く染めると、遠くに黒いズボンと黒い靴が見えた。

「よう」
男の声がする。

___この声は・・・?

 徐々に薄くなる煙の向こうから現れたのは、まぎれもなくクロだった。

「クロ・・・」
思わず口を開くとクロはこっちを見た。しかし、すぐに視線を恭子に移すと、
「待たせたな」
と声をかけた。




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