帰宅部全国大会
いつものように始まった下校時間。
普段なら真っ先に教室から飛び出す所だが、先輩は席についたまま動かない。
八百長兄弟(勝手に命名)は、先輩の思わぬ行動に訝しげな表情を浮かべるが、そそくさと教室から出て行った。
それでも動かない先輩。心配になって席に近づくと、先輩は俺の心の内を読んだのか「大丈夫だ」と言葉を発した。
「少し準備があるのでな。少し待ってくれ」
そう言うと、先輩は立ち上がり窓際に足を運ぶ。
ガラガラと窓ガラスを開けると、ポケットから銀色の小さな笛を取り出した。
そっと口に咥えるが、ウンともスンともピーともならない。
なんで笛を吹いてるんだ? ていうか鳴ってねえし。
次から次へと疑問符が溢れてくるが、先輩は何事もなかったかのように窓を閉じて踵を返した。
「準備は整った。行くぞ」