ビロードの口づけ
 ジンはすかさずクルミの上にのしかかり、体重をかけて身体ごとベッドに押しつける。

 突き放そうと伸ばした両手はあっさり捕まり、指を絡めて顔の両脇でベッドに縫い止められた。


「離してください!」
「騒げば人が来るぞ。見られてもいいのか?」


 それは困る。

 おもしろそうにニヤつくジンを睨んで、クルミは仕方なく声を潜める。


「こんな事、期待していません」
「こんな夜更けに招き入れたのはあんただ。オレが誤解しても仕方ないだろう?」


 誤解だと分かっているなら解放してくれてもいいではないかと思う。
 けれどジンにその気がない事は分かっている。
 彼は意地悪をしたいのだ。
 そして朝まで待てなかったうかつな自分を呪うしかない。

 ジンが顔を近づけながら囁く。


「オレに刃向かったお仕置きも、手を上げた罰もまだだったしな」


 お仕置きなら、この間充分に受けた気がする。
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