ビロードの口づけ
 思わず悲鳴を上げると、目の前にジンが顔を出した。


「色気のない声を出すな」
「突然人にならないでください」
「獣の方がいいのか? 次からはそうしてやる」


 意地悪な笑みを浮かべて、ジンはクルミに口づけた。

 相変わらず口を開かなければいいのにと思う。
 獣の時はあんなに素直でかわいいのに。
 けれど人の姿をしたジンにはドキドキする。

 徐々に熱を帯びていくキスに合わせて、クルミの鼓動も早くなっていく。

 少ししてジンは唇を離した。


「もう一度、と言いたいところだが、そろそろ仕事に戻ろう。続きは全てのケリがついてからだ」


 名残惜しそうにもう一度軽く口づけて、ジンはベッドを下りた。
 そしてゆうべ脱ぎ散らかした服を身につけ始める。
< 146 / 201 >

この作品をシェア

pagetop