ビロードの口づけ
 黙り込んだクルミを、ジンが促した。


「他に聞きたい事は?」
「あ、今はもう」


 獣の社会は本に書かれていた事と随分違っていた。
 特殊能力を持った、動物より少し賢いだけの生き物ではなかった。

 あまりに色々と衝撃を受けて、ジンに守ってもらった礼を言っていなかった事にふと気付いた。


「ジン、守ってくれてありがとうございました。それと色々教えてくれた事も」
「それだけか?」
「え?」


 他に何か忘れていただろうか。
 クルミが首を傾げると、ジンはニヤリと笑った。


「助けられた姫君が騎士(ナイト)に送る謝礼といえば、キスと相場は決まっている」

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