甘恋-アマゴイ-
彼が急に、私の手を握った。
大きな掌に
私の手、すべてが包まれる。
『私を選んでよ…。』
言いたいのに、声が出ないよ。

「ありがとう。」

長い睫毛の目を細めて、
彼は言う。
心壊れちゃう。

そして私のあごを、彼の指が
強く、そして優しくつかむ。
キスされるんだ…!

やっぱりダメ。
好きだからダメだよ。
私は目を細めて、
顔をそむける。
彼の喉仏が上下する。
私は目を瞑る。

私の頬が唇と重なる。

吐息が産毛にかかって
彼の匂いがする。
融けちゃう。




大きな手が、
私の髪を掻きわけ
いたずらに顔の輪郭を撫ぜた。
くすぐったい。
彼が今、微笑んでいるのがわかる。
瞼を開く。黒い優しい瞳が、
笑いかけながらも、
“ごめんね”
って言ってるから、
寂しくなっちゃう。

もっとひとつになりたいよ。
私の体の奥深くが、強く、熱く
今彼を求めている。

彼は私の髪を、愛撫する。
「それじゃ…。」

「気をつけてね。」
私は呟く。
彼は右手を上げる。
「ありがとう。」

なんて言わないでよ、ばか。
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