甘恋-アマゴイ-
そんなこと、言わないで。
足が前に進まないよ。
だって、離れていっちゃうんでしょ?
同じ道、歩きたいよ。

「なんでもない。」
いやだ、声が震えちゃう…。

「ん?」

そんなに覗きこまないで。
柔らかいブラウンの髪と
大きな真っ黒な瞳がドキッってしちゃう。

苦しいよ。
どうしたらいいの?
私は顔をあげ、彼を見上げた。
堀の深い顔。
決してイケメンってタイプじゃないのに、
素敵だね。

涙が出るやばい。
「…あの子、きっと、あなたが好きだと思う。」
私の口が勝手に動く。
あれ?
おかしいな…?
私、ぐちゃぐちゃになってる。
「私も好きだもの…」

セミが1匹鳴き出した。
カナブンが、街燈にぶつかる音がする。
また雨が降り出しそうな匂い。
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