オレンジ・ドロップ

  良かった、風邪じゃなくて

  ちゃんと勉強してるんだね

  ……頑張って

 荻野宅を見上げて、届くことのない精一杯の気持ちを心の中から送った。 

 
 「元気そうで良かったよね」


 「……うん」

 
 彼女は私の心のうちを知らない……はず


 「サヤ、元気ないみたいだけど、どうした?」


 「ううん。……私やっぱり邪魔だったんじゃないかなぁと思ってね」


 「なんで?」


 「だって、私いなければ皆と一緒に家に上がれたんじゃない?」


 「私は、最初からそんなつもり無かったしね。そんなの気にしてたの?」


 「うん」


 「サヤが居たから帰るんじゃないから、気にするのはオシマイ♪」


 「はい」


 もちろん、その事もだけど

 本当は、最後まで視線が合わなかった事が気になって

 最初に視線を外したのは私なんだけどさ

 勝手だよね





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