オレンジ・ドロップ

 家に着くなり一本の電話が鳴る


 「はい、佐山です」

 制服のまま受話器を取る


 『俺だけど』

 この声にも聞きなれたものだ


 「ハイ」


 『和泉達から聞いたんだけど、今日来てくれたんだって?』


 「ハイ」


 『なんで? あんなに行かないって言ってたじゃん』


 「それは……」

 きちんと断る為……なんて電話口で言えないでしょ?


 『もしかして、オレの事好きになってくれた?』

 相変わらず自信過剰な人ね


 「残念ながらそれは無いです」


 『待っててくれれば良かったのに?』


 「……」


 『和泉が佐山さんが待ってるって言うから、俺嬉しくて戻ったんだけど、いなかったから。ずっと皆で探してたんだ。何処にいたの?』


 「学校」


 『そこまでは考えられなかったな。なんで学校なんかに戻ったの?』


 「なんでだろうね」

  知らないよ。

 足が勝手に向かってたんだもの


 『まぁ、そろそろ家に帰ってるんじゃないかと思って電話してみたんだけど』

  いい勘してらっしゃる事


 『理由はどうあれ、来てくれてありがとう。じゃぁね』


 不思議と今までの中で一番素直に話せたような気がする




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