オレンジ・ドロップ

 この日の部活は練習に身が入らならなかった。

「サヤ、いつもよりペース落ちているみたいだけど大丈夫?」

 走りながら恵ちゃんは、息も荒れず普通に話してくる。


「うん、平……気」

 私は、余裕で話を出来る程肺は強くない。


「もしかして、手痛む?」

「それは……もう、ないよ」

「無理したらダメだよ」

「うん、ありが……とう」

 恵ちゃんは、それだけ言って風のように先に走り出して行った。

 さっきボールが中った掌よりもずっと気になる

 いつもは気にならない、グラウンドの真ん中を陣取るサッカー部

 その真ん中で大声あげて誰よりも輝くアイツの姿が目につく

 そのせいで身が入らないなんて言えないし

 ってか私……重症かも


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