記憶 ―砂漠の花―
私は、そんなラオウの様子に眉間にしわを寄せた。
「…大丈夫?ラオウ、勝手に出歩かないでよ!?」
『大丈夫だよ、アイリ。僕、ちゃんと見張っておくから!』
レンが意気揚々と得意気に言うが、何とも心配になる。
「あんたも心配なのよ…。言いくるめられて一緒に行かないでよ?」
私が二頭を相手にしていると、家の玄関先からアズが声を掛けてくる。
「アイリ?先に入ってるぞ?ラオウなら大丈夫だよ。いい子に待ってるって。」
そう言って、ドアの中へと姿を消した。
『ほら…な!』
「アズは、あんたがどんなに興奮してるか、どんな会話してるか知らないからあんな事が言えるのよ?いい?この庭から出ないでね?」
『あぁ…分かったよ。』
レンは、そわそわと川辺の蛍を気にしている。
「レンも!虫さんをいじめちゃ駄目よ?」
『うんっ。』
「綺麗に咲いてるお花さんも食べちゃ駄目よ?」
『うんっ!』
「よし、解散。」
若干、…いや結構不安は残るが、彼らを信じ…ます。
私も少し遅れて、先生宅のドアを開ける。
すると、そこには幼い黒い猫が、ちょこんとお出迎え。
「かっ…可愛い…!こんにちは。お名前は?」