記憶 ―砂漠の花―
14・奪われたモノ
14・奪われたモノ



サイル島の城は、灰色の石が積み立てられた重厚な外観だ。

この談話室の部屋の壁も、灰色の石造り。
これは、この城のどの部屋でも同じ事なのだろう。


城の外側に面する窓は、かろうじて光が差し込む程に小さくも、外部を遮断する中庭側には、大きな窓。

窓には、昼には出番のない深緑色の落ち着いた厚い布が、両側に束ねられていた。

その窓からは、中庭の緑が一望でき、私たちが先程まで潜んでいた場所も遠くに確認出来た。


見えていたのかな…。
今さら、そんな不安を感じた。


深い焦げ茶の背の高い机と椅子には、木彫りの模様が施され、その長い机には細工のされた蝋燭置きが随所に置かれていた。


椅子の体に面する部分には、赤より深い紅色の布が張られている。

私だけは、その背の高い椅子で、床に足をつく事は出来ずにもて余していた。


落ち着かない…。

全体的に、どちらかと言えば、趣味の良い落ち着いた大人な内装。

しかし、なぜか居心地の悪い部屋…。



マルクは敵意を向ける事もなく、ただ穏やかに私たちに笑顔を向けていた。

魔力を『封印』している私にはそう見えるのだが、先生にはどう映っているか、分からない。

< 164 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop