記憶 ―砂漠の花―
『そして5年という長い歳月を経て、ラルファのウィッチの血が途絶えた頃合いをみて…』
「ラルファへの侵略が始まった。それが20年前の戦争ですね?」
アズが歯を食い縛り、拳に力を込めながら父上に聞いた。
『…そうだ…!』
私の瞳からは大量の涙が流れていた。
なんて、残酷…
ひどい…
仲間の手によって殺されていったウィッチたちの無念が、手を取るように分かる。
「…人間て…悲しい生き物ね、アズ…」
アズが私を強く抱き締めた。
歴史の闇に紛れた、
罪のない大勢の犠牲と、
向ける矛先のない無念。
大多数の大きな間違い、
許されない罪…
許されてはいけない罪…
今のラルファは、
その上で成り立つのだ。
私の脳裏に浮かぶラルファの大人たちの顔。
その全てが、曇って見えた。
酷い…
皆…、皆…ひどい…
ウィッチだから?
それだけで…?
全ての根源は、マルク!
私の中で恐ろしい憎しみが育ってゆく…。
――ドクン…ドクン…
心臓が大きく波打った。
怒りが、
負の感情が止まらない…
――ドクン…ドクン…
体を包む紅い光が、
…強さを増してゆく。