記憶 ―砂漠の花―

「アイリ…気分は?」

母上がアズとは逆側のベッドの横から聞いた。


「…大丈夫…」

「…魔力も、今は安定しているようだな。」

先生がそう言うと、この場の誰もが笑顔を見せた。


「心配したぞ…?」

キースも溜め息をついて優しく笑った。


ふと、私の手を握るアズの手に違和感を感じて目を向ける。
アズの指から手のひらにかけて、包帯が巻かれていた…


「……あぁ…っ、ごめんなさい!ごめんなさい、アズ…」

握られた手を、もう片方の手のひらでそっと包み込み、私は嘆いた。

私が貴方を傷付けるなんて…!


「大丈夫だよ!包帯が大袈裟なんだ。細かい傷があるだけで深くないし、ちゃんと動くから!ほら…」

そう言うと、アズは自分の手を動かせて見せた。

嘘…
あの時の血の量…、
深くないはずがない。


黒い小さな影が、私の布団にちょこんと飛び乗った。


『心配しにゃくて大丈夫よ!男の子にゃんだかりゃ!平気よ。』

にゃぁ…と、私の顔を見て鳴いた。


「タビ…!」

ふわふわの小さな体で私の胸元にすり付いた。


『ご主人様にお呼ばれして来たにょよ…?』

「…そうなの…」

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