記憶 ―砂漠の花―
18・暴走する心

18・暴走する心



―――うそ…

嘘だと…、

これは悪い夢だと…


誰か、言って…?
ねぇ…



アズが死んだ
アズは、死んだの…?

アズが死んだ
死んだ
アズが…?


そんな馬鹿な…


私の感覚がおかしくなったの…

そう、
アズの心臓の音が、
聞こえないなんて…


聞こえないだけ…

本当は、
ちゃんと動いているの…

だってね?
さっきまでは……



カタカタ…と震える指を、
アズの胸に当てた。



…て…ない…
…動いてない…!!

そこにあってはいけない、
静寂――



「あぁあぁぁ――!!」


嘘、嘘、嘘……

これは私が見る、
渦巻いた悪い夢…!



「――神よ!なぜ…罪もない我が子が、なぜ二人も…なぜ…」


母上は望みを全て無くした様に、暗い灰色の湿った空へと天を仰ぐ。

神と叫ぶ。



神なんて、いない。

いたら、
アズは死なない…


赤い血にまみれ、
静かに…
地面に横たわるアズ。

その瞳で、
私を見つめたまま―――



「…あぁ…!ア…ズ…」


私がアズの血にまみれ、
何度、
体を揺さぶろうとも…


起きない…
もう、起きないの…?


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