記憶 ―砂漠の花―



この…
後ろに感じる温もりは、アズ…?


残念ね…

顔が見えないの。



アズの腕が、
私を強く抱き締める。


アズ、アズ…、アズ…

私の命は、貴方の為にあった。



『…アラ…ン?…私と…アズの回線を…』

繋いで。
繋げて…?


『……っ!!…わかっ…た…』


アランは、私が尽きる事を悟ったのだろう。


静かに、
自分と私との回線を切った。


ごめんね。


最期は、
ちゃんと伝えたいの。
私の本心からの言葉を…



『…ア…イリ…?』

アズが私を呼ぶ。


『…アズ…最期に…貴方の役に立てて…良かった。』

『…アイリ…アイリ…!』

そう…ただ名前を繰り返す。

つい先日の私みたいね?
立場が、逆転だね…



『私…貴方を愛していた。心から…』


「……ぐっ…」

はぁはぁ…と、
私の口から息が漏れる。

抱き締めるアズの腕に力が入る。



『…だから…罰が下っ…たのね、愚かな私に…。』

『アイリ…、違う…違う…!』


違わないの。

でも、

だけど…
愚かな私は、


『…愚かな私は…それでも願ってしまう…。どこかで…、この想いを抱いたまま…また出逢い…たい…と…』


< 263 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop